読み物

□悠久の刹那
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「いや、です。目を開けて下さい!」





「僕のせいで……すいません、すいません!!」




あぁ、またこの夢か。

紅く染まった視界に広がるのは泣き崩れた愛しいヤツ。


みっともねーな、泣くなよ。オレは幸せだったんだぜ


だけど、溢れ落ちる涙を拭ってやりてーのに

身体は動かなくて。


音になっているかも分からない言葉を紡ぐ。


オレは死んでしまうけど


これ以上泣くなよ



お前の涙を拭いてやるオレは、もう近くに居ないんだから





「大っ嫌い、だ……てめぇ、なん か」





せめてオレが死んだ後は幸せに生きろ



オレが生きていた間のお前の時間はオレが占領していたから





「別れ、られ……て せいせい、する……」




生きたい、生きたい、生きたい。




だけどその願いが叶わない事くらい、自分でも分かる



身体の機能は低下して冷たくなっていく指先。


息をするのもやっとで


だけど、伝えなければいけない





「だ…から、探すな……よ。オレの事…なん、か忘れ ろ。絶対、探す な」




死んでまで、お前にオレの陰を背負わせたくないから。

「愛してるんです、逝かないで……お願いです 待ってください」



愛してくれて有り難う


オレはお前を忘れない。



紅く染まっていた視界は次第に白くぼやけて


苦しさも痛さも鈍くなり、眠気が襲ってくる。




「愛して…るから……忘 れ……



最期に繋いだ手に込めた力はお前に伝わっただろうか。



どうかこれ以上泣かないで、愛しい人よ





最期まで素直になれなかったオレを許して





愛してるなんて言葉じゃ表せないくらい愛してるんだ。





お前がオレを忘れても、オレはお前を忘れない。



薄く閉じていく瞳に見えたのは涙をこぼす君。




あぁ、その涙を拭ってやりたいのに………






























「また、かよ」


この夢をみるといつも眠れなくなる。自然と涙が止まらない。


悲しいくて、愛しい夢。



胸を裂くような 悲痛な幻


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