読み物

□溺れるような
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「ベル君にはこんな汚い感情見せたく無いから必死になって隠してるんですよ」


形の良い唇から紡がれる音すら水になって俺に染み込む。



「うしし、骸のくせにオレに隠し事とかうぜー」



全部見せて

全部魅せて


お前の全てをオレに



「ベル君は僕を惑わすのが得意ですね」



違う。惑わされてるのも、酔わされるのも、いつもオレの方。



「む、くろ……」



頬を滑る骸の手を取って
その手に口付ける。



「オレがお前に溺れるように、お前もオレに溺れろよ」



自然に溢れた本音をすくって

君は微笑む。



「気付いて無かったんですか?」



口付けを繰り返していた手を離して、オレは聞き返す。


「何が?」



「僕はもう、君に溺れてるんですよ」



ギシリと唸るベッドのスプリング。

天井と骸が見えて

押し倒された事に気づく。



「綺麗なオッドアイだよな。オレ、好き」



「いつも言いますよね」



だって、そう思うんだ。


左右で色が違うその瞳、澄んだ色の奥に滲む
残酷な炎。



お前がオレに溺れてるなら



オレもお前に溺れてみようか



「きっとベル君は気付いて無いんです。僕の独占欲の強さに」



「じゃあ、教えろよ」



君の全てを、知りたいから


骸は瞼に唇を落として、前髪をずらした。

「例えば、この瞳」



「オレの目?」



柔らかく微笑む骸が瞼に焼き付いて、オレはまた君に溺れた。


「ベル君の瞳に映る全ての物に嫉妬して、壊したくて、僕だけを見れば良いと……ずっと思っています」



「うん。」



「翼を奪って、監禁して、僕だけが、僕だけの……」



「うん。」



いつもの余裕は何処へ行ったのか

震える声で愛を囁く。


「ですが、僕は君の目に映る僕にすら嫉妬する」



「……うん。」



骸が、指を絡ませる。


「ベル君の触れる物全てに嫉妬して、今だって……触れているのは僕なのに」



キュ、と。力が込められて
熱が伝わる



「ベル君に触れている僕にすら、僕は嫉妬する!!」



荒らげられた声、愛しい君。


「骸、こっち向けよ」


絡められた手を引いて、乱暴に口付けした。


初めて自分からしたキスは余りに乱暴で、お互いの歯が当たって血の味が口内に広がった。



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