読み物

□永遠に繰り返す
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「………落ち着いたかよ」


結局、僕が泣きやむまで黙ってそのまま居てくれるんですね



お節介な所も、不器用な所も、優しい所も



「好き、でした」



「誰をだよ」



さして気にもせず遠くを眺めながらタバコをくわえて聞き返す



「隼人君が」



「は?」



タバコは口の端からポロリと落ちて、煙が出たままのそれは足元に落ちた。



「正確に言うと隼人君の前世ですかね」



君の知らない




誰も知らない






僕だけが、知ってる



僕しか知らない



「すいませんでした」



守れ無くて



非力で



「骸、とか言ったよな?」



「はい」




「オレを探してたって……どんくらいだよ」



「ずっと、ずっと」




気の遠くなる程長い時間



「何度も、何度も」




星の数ほどの人間の中で君だけを




「探していました」



「………諦めるだろ、普通」



「それが出来たら苦労しませんよ」



僕は苦笑して、また君を抱き寄せる。



君は生きてる



温かい



夢じゃない




君と別れてから何度生まれて死んでを繰り返したかも覚えていないのに
君の事だけは鮮明で、眩しくて愛しいまま


















「大っ嫌、いだ……てめぇ、なん か……」




「別れ、られ……て せいせい、する……」




掴んだ手からは熱が引いて


蒼白くなった顔



血まみれの腹部



消えそうな呼吸と、苦しげに押し出される声





「だ…から、探すな……よ。オレの事…なん、か忘れ ろ。絶対、探す な」


弱々しくなる心音、何も出来ない自分が悔しくて吐き気がする





「愛、して…るから……忘 れ……



僕を見ていた瞳は静かに閉じられて、傾いた首

止まってしまった、心臓



力の抜けた君の手、冷たくなった身体


もう開かない、瞳



呼んでも、呼んでも、君は起きない。



もう、笑わない



もう、怒らない


もう、届かない僕の声




もう………全てが遠くて、手遅れだった



君が居たからこそ鮮やかだった僕の世界にもう色は無くて、熱が消えたように一気に灰色になった。



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