読み物

□永遠に繰り返す
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忘れるだなんて 出来るわけ無いじゃないですか。


あんなに大切だった君を、守れなかった僕



「君が言ったんですよ、迎えに来いと。覚えていろと」



僕は君の言葉を偽って、ずっと君を覚えて
探していました。



「愛していました」



君の死によって縛られた君への想い。

鉛のように鈍くて重たいものが胸に埋まって

だけどその苦しみは、君の傷跡。
神に逆らって輪廻を巡り続ける残酷な運命の中で

君の存在だけが僕の希望だったから



「嘘つくんじゃねぇ」


君はまっすぐ僕を見据えて、はっきりと言い放つ。



「オレは、好きなヤツに死んでまで背負われるくらいなら忘れろって言う。お荷物なんかまっぴらだからな」



前と変わらない、澄んだ瞳。
綺麗なエメラルド色の瞳は小さな怒りを灯して



「君には敵いませんね」


君の気持ちをしっていて、君に縛られた。
もう 愛してるなんて言葉では足りないくらいに愛していたから。


「僕を許して下さい」



「あぁ」



「君を守れなかった僕を」



「もう良いよ、お前は十分苦しんだ」



優しい君の言葉が心に刺さって、血が吹き出す。


いっそ、許さないと言ってくれれば



「過去を振り替えるな、オレに縛られていた自分を解放してやれよ」



回された腕が温かくて、涙腺がまた緩む。



「好き、です。好きなんです。君が」



みっともなく震える声、まるで主人に捨てられまいと必死な子犬のように
君にすがりつく。



「違う。お前が好きなのはオレじゃない」



背中をさすられ、諭されるように言われた言葉は
優しい言われ方とは裏腹に冷たいものだった。



「お前が好きなのは、オレの前世で……オレじゃねぇ。」



僕は………



「お前はオレを通して、別の人間を見てる」



反論しようと顔をあげると、苦痛に歪んだ君の顔。



心が、痛いんですね


あぁ、僕は


「そうかも知れません。隼人君を通して君の前世を見ていた」



「過去にばっか縛られてどうしやがる」



トン、と

胸を殴られて。


「過去を悔やんでもなんも変わんねぇじゃねぇか」



心の鉛が、抜け落ちて



今までソレを繋ぎ止めるのに必死だった

君が居た、証。


僕が背負う、罪。


手放したくない、痛み。





君を思い出して泣ける事が誇らしかった。



色褪せない過去が愛しくて

振り返っては、前に進む事を拒んだ


君を忘れてしまう事が何よりも怖かったから。


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