読み物

□いっそ引き裂いて
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グラグラと不安定な位置で揺れ続ける想い。

貴方への想いを伝える事も


諦める事も出来ない俺を



愚かに思いますか?



みじめな気持ちにさいなまれてまた心が痛んだ。


空はこんなに蒼いのに、雲はこんなに白いのに

俺の全ては汚くて。



胸部が圧迫されたように苦しくて肺に息を詰め込むのがやっと。


汚い俺に貴方は眩し過ぎて


だからこそ、届かない手を伸ばしてもがく。




ド ウ カ 俺 二 墜 チ テ 来 テ



空を見上げて鳥が墜ちて来る事を期待する猫に、俺は似ていて


限りなくゼロに近いその確率を捨てきれないなんてバカにも程がある。



諦めないで見ていれば、いつか……なんて。


進む事も戻る事もせずただずっと同じ位置で揺れ続ける



土方さん……



「アンタが好きでさァ……」



自分ではどうしようもないこの想いを誰か止めて

こんな苦しい気持ちはもう十分だから。



叶わない想いを抱え続けるのは、心に鉛を含んだみたいで。



誰か止めて

俺を、止めて



吐き出す方法を知らない感情はただ涙に形を変えて流れ続ける。


熱を持った冷たい感情は表裏一体で。




ねェ神様…俺何か悪い事したかな?



震える手で祈りを捧げるから俺を解放して。

誰でもいい、俺の記憶を奪って下さい



あの人への想いと一緒に。



それが無理なら、あの人と言う光が当たらない闇に連れていって


強烈に焦がれる気持ちを闇で隠して



「………帰って来た」



廊下を歩く音で判別出来るなんて俺の頭はイカれてる。

歩く時の癖とか、歩幅とか……


全てに、貴方を感じて。



涙でぐしゃぐしゃになった顔を服の裾で拭って、急いでアイマスクを着けた。



扉が開いたら、少し間を空けて貴方は言うんだ



「ただいま、総悟」



聞き慣れた声を懐かしく感じるなんておかしい。



土方さん、おかえりなせェ



声に出せば震えると分かっているから
心で呟く。



「……っ!?」



不意に頬へと押し当てられた冷たい感触に、声にならない声をあげた。



「ったく。起きてんならおかえりくらい言えよ。ほら、アイス」






あぁ、どうして貴方はそうやって



残酷な優しさを俺に与え続けるんだ。



その優しさに、どんなに俺の心が壊れそうになるか



貴方は知らないんでしょう?



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