樹々のざわめき
□LOVE DESTINY
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明け方に見る夢は正夢になると言う。
それが近い未来なのか遠い未来なのか…はたまた過去の事なのか…それを知る事は出来ないけれど。
愛おしむ様に私の名前を優しく呼んでくれたあの人。
きっと出会える気がするの―――――。
柔らかな春の日差しが降り注ぎ…豊かな緑は照らされ、水車は雪解け水の力を借りてその力を取り戻す。
それは長い長い冬を終えて巡って来た、コリアンドル村の春。
「アリーシャー!そろそろ行きましょうー!」
「待ってー!今行くから!」
パタパタと足音がして玄関に現れたのは一人の少女。
金に近い飴色の髪と空をそのまま嵌め込んだ様な碧の瞳の彼女の名前はアリーシャと言う。
「相変わらずね…。たまにはアリーシャが私を待ってみてよ」
「…ごめんなさい、シルメリア…」
顔を見るなりその友人であるシルメリアの小さなお小言を頂いてしまう。
でもそれは彼女が自分を気にかけて居ると知っているから…アリーシャは待たせた事を素直に詫びた。
「もう良いわよ。あぁ…もう、ほら!髪がグシャグシャ。キチンとしなさい」
「ご、ごめんなさい…////;」
慌てたせいで乱れたアリーシャの髪をシルメリアが手直しする。
こんな風に接していると…同い年の友達なのにシルメリアといるとアリーシャは自分が妹になった気分になってしまうのだ。
彼女の様にしっかり出来れば良いのだが…元よりおっとりした性格なせいか…シルメリアの様に物事をスマートにはこなせない。
それがまた密かなコンプレックスでもあった。
「ほら、出来たわ。…行きましょう、本当に遅刻になってしまうし」
「そ、そうね…」
落ち込みかけたアリーシャの様子を察したのかシルメリアがクスッと笑うとアリーシャを促す。
俯いていた顔をハッと上げ、アリーシャは慌ててシルメリアを追い掛け、並んで歩き始めた。