水の旋律

□苦さと甘さ。
2ページ/17ページ





―2月14日、放課後。尚和高校教室。



「よし!今日は部活も休みだし…優との待ち合わせには、まだ時間があるから、京にぃにチョコ渡しに行こ!」


そう言いながら、きらは、鞄とチョコを入れた紙袋を持って教室を出た。







「おい、柏木。」



「ひぃいっ!!…この声は……」


廊下を歩いていると突然、声をかけられた。
そして、恐る恐る後ろを振り向くと…



尚和高校、生徒会長、風紀委員の仕事も務める安曇康秀が現れた。


「なんだ、その反応は!俺はモンスターか!?」


(モンスターの方がまだ可愛げがあるよ…)


「いえ、いえ!滅相もございません!!…それで、何かご用でございますでしょうか!?」

きらは、早口にまくしたてながら、自分の後ろに紙袋を隠した。



「お前、敬語がおかしいぞ…まぁ、そんなことよりも……その後ろに隠した、甘い匂いのするものは、一体何だ?」


(うっ!!バレてる…)

「…ったく、今日は甘い匂いで、校内が充満している……今日は14日だったか……菓子会社の策略にまんまとひっかかって…」


(やばい!没収されたら――っ!!!!……そうだ!!)


「これ!あげます!!」


そう言って、康秀の胸にクッキーを無理矢理押しつけ、その場をダッシュで逃げた。


「って!おい!!かしわ…」


「それ義理ですからぁ〜!!!!」



その声は、校内中に響き渡った。



「おい!!………義理…か…」


「残念だったな…康秀…」



「っ!!貴人さん!!」



そう、きらと安曇が話していたのは、社会科準備室の前だったのだ。
準備室から貴人が出てきた。


「お、俺は!!……って聞いてください!貴人さん!!」



スタスタと歩いていく貴人を必死に追いかける康秀だった。



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ