水の旋律
□苦さと甘さ。
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―尚和高校校門前。
「…あいつ、いつになったら出てくるんだ…」
優は校門の壁に、もたれ掛かり、きらを待っていた。
きらとの待ち合わせは駅だったのだが…
運悪く授業が早く終わり、時間を持て余すことになったのだ。
そして、優は追いかけられる女子の群から逃げるように、尚和高校にやって来たのだった。
(幻惑謡の幻でなんとか逃げきったが…こんなことで、力を使うことになるとは……でも、あのままだと、きらには確実に会えないしな……)
『義理ですからぁ〜!!!!』
突如、校舎から響くきらの声。
「んな!!何やってるんだ、あいつ………もしかして、チョコの取り合いでもしてるのか!?」
今すぐに校舎に侵入したい優だったが、尚和高校には九艘の者がいる。荒波をたてたくはないので、優は思いとどまった。
(くそっ!早く来い、きら…!!)
そう、事は一分一秒を争う状況下にある…
そんな状況で待たされる者の時間は、とてつもなく長い…
そして、しばらくすると、きらが玄関から出てきた。
そして校門へ向かって歩き始めた。
しかし、玄関を出たところで、きらは辺りを見回し、何かを見つけたようで、右に折れてしまった。
優は不思議に思い、きらの視線の先にいる人物を見た。