The Original Story
□彼女と彼女の決着
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こうして、長年の片思いが実り、晴れて恋人同士となったのだが…
実際は、まだ問題が残っていた…
「私はぜっっっったい、認めないんだからっ!!」
さっきから、もうずっとコレだ…
稔ちゃん…いい加減にしないと、その口いっぱいにバーベキューの肉を詰め込んじゃうよ?
「また、手なんか繋いじゃってさっ!」
そうなのだ…
玄関でサンダルを履くときにバランスを崩して、フラついたところに要に手を掴まれ、そのまま庭へ戻って来てしまった…
…だって、こんなことでもなかったら、いつ繋いでもらえるのかも分からないんだもの…
もう、遠慮なんかしなくていいでしょ?
「私も繋ぐんだからっ!」
「ちょっと!何するのよ!?」
私と繋いでいる反対側の腕を掴もうとする稔ちゃん。
今まで、黙って目をそらしていたけど、もうこちらも遠慮しなくていい!
アンタと立ち場が違うんだからね!?
「離しな…」
「離せって言ってるだろっ!?」
要は腕にまとわりつこうとしている稔ちゃんの手を振り払い、声を荒げた。その要の声が蝉の鳴き声をかき消したかのように、辺り一瞬、静まりかえった。
滅多に大声をあげない要に一同は驚いた。
「俺は!高校の時からコイツのことが好きだから、あきらめろってずっと言ってるだろ!?」
あの話は、本当だったんだ…
高校に入学してすぐ、稔ちゃんは要に告白した。しかし、要は『好きなヤツがいる…』と私の名前を言って断ったのだった…
「だって、私の方が女の子らしいでしょ!?私は背も高くないし、見た目も要くんと吊り合うでしょ!?要くん、中学のときから身長のこと気にして、給食のとき、牛乳ばかり飲んでたじゃないっ!」
はいはい…デカ女で、悪うございましたね…
それに可愛げがないのは、自分が一番分かっていますから!
…ってか、稔ちゃん…
あなた、言ってはいけないことを言ってしまったよ…本人、気にしているんだからよ…触れないでおこうよ…
―あれは…確か、中学2年の大晦日だった…
町内にある神社に毎年御参りに家族で行くのが恒例だった私たちは、要の家族とバッタリ会い、要父が『ところで…』と私と要に訊いたのだった。
『お前たち、どっちが背高いんだ?』
そして何故か、背中合わせに背くらべをすることになった。あの時は背中越しに心臓の音に気づかれないかと、ドキドキしたものだ。
『う〜ん…にぃちゃんの方がちょっと高いかな…?』
と聖が言ったときの、あの要の嬉しそうな顔…
今年最後にいいもの、見れたわ…と神様に感謝してしまったよ…
そして中3の運動会では、男女関係なく背の順で整列することになって…
私はクラスの女子で一番身長が高かったから、男子がムキになって背比べしていたんだよね…
そのときも、要と大して身長変わらなかったから、背くらべすることになって、他の男子が『楓の方が高い…?』って言ったら、『こいつの靴が高いんだっ!』ってムキになって、結局、要の方が高いってことになったんだよね…
―何て可愛いんだ!?こいつはっ!
…と、不覚にも思ってしまったね…
今では要の方が高いのは一目瞭然だけど、男の平均の身長ってだけで、決して『高い』とは言えないんだよね…
こんなにも本人が気にしていることを言わないでおこうよ、稔ちゃん…