The Original Story
□彼女と彼女の決着
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「身長のことなんか関係ないだろっ!?それにお前の方が身長低いからって、そんなことでお前を好きになんかならないっ!」
その言葉に、私は涙腺がゆるみそうになった。あれほど、身長のことを気にしていた要が、『外見は関係ない』と言ってくれたのが、とても嬉しかった。
「…じゃあ、楓ちゃんのどこが好きなのよっ!?」
それでもなお、言い返そうとする稔ちゃんの声はとても痛々しく聞こえた。
「人が気にしていることは言わないところだよ!!」
「――っ!!!」
あれだけ、五月蝿かった稔ちゃんがその一言で黙り込んでしまった。それほど、要の言葉には迫力があったのだ。
「こいつは…俺が身長のことを気にしているのを知ってて、わざと他の話に変えようとしたり、身長の話題に入ってこなかった…」
「……要…」
要がまさか気付いているとは思わなかった…
身長の話になると不機嫌な顔になる要に気付き、違う話題を振ったりしていたのだ。
「お前は自分をよく見せることしか考えてなかっただろ!?
…コイツ、性格キツそうに思われてるけど、自分に厳しいだけで、人が本当に嫌なことや気にしていることには、踏み込まないんだ。興味本位で何でも訊こうとするお前と違ってな!コイツは、そんな気遣いができるヤツなんだよ!お前にコイツのこと、とやかく言われる筋合いないっ!」
「…要…」
今まで、私のことそんな風に見ていてくれたんだ…
私の気持ちを要は分かっていてくれたんだ…
そのことがとても嬉しくて、不覚にも涙が出そうになった。
「そんな気遣いがお前にできるのか!?…それにさっきコイツのこと、女らしくないって言ったよな?他のやつに女らしく思われなくたっていいんだよっ!俺の前でだけ、女らしければっ!!」
グッと繋いでいた手を引き寄せられ、抱き締められた。
コイツは…
どこまで私を喜ばせたら気がすむのだろうか…
私のことを見ていてくれたこと、みんなの前で宣言してくれたこと…私はもう我慢の限界で、涙を流してしまった。
人前で一度も泣いたことがない私が、こうして泣いてしまうなんて、不覚にも程がある…
でも、私を抱き締めてくれる要のおかげで私の泣き顔は誰にも見えない。要が守ってくれる。
だから私は安心して泣くことができた。