The Original Story

□彼女と彼女の決着
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「コイツのことを悪く言うのは俺が許さないっ!」

「――っ!!!」

「……もう、要のことは諦めろ、な?」

桐島先輩が稔ちゃんに声をかけた。

「もう、二人の間には入り込めないからさ…」

その桐島先輩の言葉を皮切りに、稔ちゃんは泣き出してしまった。

「…ほら、お前もそんな泣きそうな顔するな、葉月…」

「せ、先輩〜っ!!これはもらい泣きです〜っ!!!」

涙を拭い、後ろを振り向くと、泣きじゃくる稔ちゃんと、何故か先輩にすがり、今にも泣き出しそうな葉月…

「どうしちゃったの?葉月…」

「いや、あいつも同じ気持ちなんだろう…」

「???」

「おめでとう!ご両人!!」

事の成り行きを静かに見ていた理子が私たちに近づいて言った。

「ほんと、よかったねぇ!楓!!」

「ありがとう!理子!!」

私たちはぎゅっと抱き締め合った。

「あんたって愛されてるね…さっきの要くん、とてもカッコよかったよ…」

耳元で話かけられて、くすぐったい…

「でしょ?…でも、私のモノだからあげないよ?」

「こいつ〜!!!」

「ははっ!でも、本当のことだも〜ん!!」

子どものように走り回る私と理子だったが、サンダルは当然、走り回るためのものではない…

こける!っと思った瞬間、腕が伸ばされ、抱きとめられた。

「…全く、子どもみたいだな、お前…」

「…どうせ女らしくないですよ〜だっ!」

さっきの言葉を返してみる。

「だから、俺の前では十分、女らしいからいいんだって…」

「か、要っ!?」

耳元で何を話してくれるかな!?

「私、まだ諦めきれませんから!」

おい!まだ言うか、この女はっ!!
しつこい女は嫌われるぞ…?

その言葉を捨て台詞に、稔ちゃんは逃げるようにして去った。

「俺もコイツを送っていくわ…」

桐島先輩が庭の隅で『の』の字を書いて、いじけている葉月を指して言った。

「はい、お願いします…俺たちは片付けをしてから電車で帰ります」

「そうか…流石にこんな状態の葉月とお前たちを一緒の車に乗せるのは酷だからな…そうしてもらうと助かるよ…」

『よいせっ!』と葉月を引き起こして、要ににじり寄り、先輩は言った。

「…楓のこと泣かしたら、承知しないからな?肝に銘じておけよ?」

「先輩も俺のモノに手を出したら承知しませんから、覚えておいて下さいね?」

「ふん…言ってくれるねぇ…」

「??」

何を言っているのか分からないけど、笑顔で微笑みあう二人に、何故か異様な空気を感じたような…?

「じゃ!後片付け、頼むなぁ〜」

先輩は私に手を振り、葉月を半ば引きずるようにして去った。



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