The Original Story
□彼女と彼女の決着
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電車の中では相変わらず、私が一方的に話を振るばかりだったけど、私の話に相槌を打ってくれたり、目を見て話してくれた。
そんな些細なことが嬉しくて、ついつい一方的に話してしまったんだけど…
話が切れたときのほんの少しの無言の時間も、居心地が悪くなかった。むしろ、『次どんな話、しようかなそうかな…』と、思考錯誤する楽しい時間になった。
私たちの共通の話題といば、大学の話や地元の話ぐらいしかないから、話題探しっていっても、そんな話題があるわけでもないけどさ…
話題豊富な人になりたいと切実に思ったよ…乙女ゲーや二次元についてなら、何時間も話せるけどさ…(苦笑)
ただ、隣に居る、この距離に居ることが許されているこの関係になれたことが嬉しかった。
決して、気さくなタイプではない、近寄りがたい要の隣に居れることが、まだ夢のようで、実感したくて私はしゃべりっぱなしだったんだと思う。
自分でもどれだけテンション高いんだよ…と思ったよ…
でもこんな自分も嫌いじゃない…
そう思えるのも、要のおかげ、だね?
ありがとう。
そんな高いテンションのまま、あっという間に1時間が過ぎ、駅に着いた。
さて、駅からからはバスに乗り換えだ。
5分ほど待ち、バスに乗り込んだ。
夏休みだが、車内は部活帰りの高校生で混んでいる。どこか空いている席はないかと探していると、聞き覚えのある声が聞こえた。
「あれ?にぃちゃんと…楓ねぇちゃん?」
「へ?」
と思わず間抜けな声を出してしまい、声のした方を振り返ると…
「やっぱり、そうだ!電車で帰ってきたんだ?車で行ったのに?」
そこにはミニチュアの要…ではなく、要の弟、聖がいた。
「ああ、まぁ…ちょっとあってな…」
要が先ほどのことを思い出しているんだろう…頭を掻きながら言った。
「ふぅ〜ん…二人で帰ってきたんだぁ…」
「なんだ?文句あるのかよ?」
「いや〜別にぃ〜…」
ニヤニヤと笑う聖に私はどう反応していいのやら…
「なぁ!なぁ!聖!この人、お前の兄貴?」
先ほどからこちらをチラチラ見ていた聖の隣にいた高校生は、どうやら聖の知り合いらしい。
「あぁ…兄ちゃんと…」
そう言って、聖はチラッと私の方を見た。
私をどう紹介していいものか迷っているようだ…
ここは無難に、『地元の同級生』ということで…
「地元の同級…」
「俺たち付き合ってるんだ」
「え?」
私の声を遮るようにして、要が言った。
「なんだ?そうだろ?」
「うん、そうだけど…」
いや、まさか…こうもあっさりと言われると驚くというか…
堂々と言う要とは違い、私は照れくさいやら、嬉しいやらで、正直、どう反応していいのか分からなかった…