The Original Story

□彼女と彼の約束
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「「こんばんわ〜!!」」

私と茜は居酒屋の暖簾をくぐった。

「おうっ!久しぶりだなっ!っつても、成人式ぶりか…」

幹事の子が威勢のいい声で出迎えてくれた。
店内は賑わっており、座敷を覗くと要の姿が見えた。その隣には、稔ちゃんの姿も…

ほんっっっっとに神経の図太い女だな!!

「会費、回収しま〜す」

幹事の言葉にハッとし、無意識に睨みを効かせていた表情を慌てて戻し、会費を払う。

「席は自由席となっておりま〜す!」

「「了解!!」」

私と茜はグッと親指を立てて言った。

座敷を見回し、どこに座ろうかと空いている席を探していると…


「――楓っ!お前はココ!」

「へ?」

その声は要のもので、ココと指を指す場所を見ると…紛れもなく、要の横で…
しかも今、稔ちゃんが座っている場所…

「えぇ!?」

…せめて反対側にしてくれよっ!
男連中側がいいよっ!

そんな要の言葉に男連中は、私と要の顔を交互に見合わせて驚いていた。

「早く来い!」

「は、はいっ!」

有無を言わさぬ迫力に即答した私だけど…

どうして私が言うこときかないといけないんだよ!
お前がこっちへ来いよっ!全く…
あぁ!にしても、行きづらいよぉっ!!

と心の中で叫びながらも、のそのそと要の隣に移動する私…

ううっ…!
周囲の目が痛くて仕方ない…

その視線を受け流しながら、要の隣に移動したが、稔ちゃんは一向に席を譲る気配がない…
ど、どうすればいいの…っ!!


「そこは楓の場所だから、他の席に行け」

と、稔ちゃんを睨みながら、有無を言わさぬ態度で要が言った。


…こ、こわっ!
こいつこんなヤツだったけか!?

私にかけられた言葉ではないが、萎縮してしまいそうだ。

その言葉に稔ちゃんは、それはもう悔しそうにして立ち上がり、すれ違い様、私をギロリと睨んで他の席へと移動した。

「ほら、早く座れよ」

「あ、うん…」

さっきまで稔ちゃんが腰を下ろした座布団は温かく、どれだけの間、要の隣に座っていたのだろう…と、そんなことを考えては、少し腹が立った。

「お前、来るのおっせぇよっ!」

「いや、だってさ!何時に行くとか約束してなかったし…」

「……。次からは一緒じゃないと行かないからな…」

「…は?何か言った?」

ボソボソと言うから聞き取れない…

「何でもないっ!」

「そ、そう…?」

何か言ったのは確実だが、頑なな態度で何を言ってもムダだと思い、それ以上追求しなかった。

…でも、どうして、私がこんなに気を遣わなきゃいけないのよっ!







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