The Original Story
□彼女の夏の軌跡2
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―車内の温度差は激しかった…
私は何故か、
『恋人専用シート(はーと)』
などとふざけたシールが張ってある助手席に座らせられ、後部座席には要と葉月が座った。
勿論、桐島先輩は運転席(桐島先輩の車だから)。
私の真後ろに要、その右隣に葉月が座った。
「んでさぁ〜…その時、楓がさ、お客さんに向かって…」
「…って、その話はよして下さいよっ!先輩ッ!」
「いいじゃん!減るものでもないしっ★」
「減ります!」
「……ってか、先輩、いつ楓のこと呼び捨てにするようになったんですか…?」
葉月は身を乗り出して、桐島先輩に尋ねた。
「そんなの……、二人だけのひ・み・つ★だよなぁ、なぁ?楓?」
「もう何でもいいです…はぁ…」
「…お前だって、気になるだろ?なぁ?要?」
「……別に…」
「あっそ…お前、ノリ悪いのな…」
「別に…」
「はぁ…」
車に乗ってから要は、ずっとこんな調子だった。
窓の外の景色をだるそうに眺めて、会話を振ると適当に相槌を打つだけ…
眠いのか、それとも興味がないのか、不機嫌なのか…
普段、無表情なだけあって表情から感情を読み取るのは至難のわざだ…
……とにかく、葉月や先輩話が話を振ってもずっとこんな調子で、会話を楽しめる状況ではなかった。
(何だかな…どうして腫れ物を扱うみたいに接しなきゃいけないんだろう…
こいつそんなにデリケートなヤツだっけか?
それとも、何か気にくわないことでも?
あるんだったら、はっきりと言えよ!男らしくっ!)
そう心の中で思いつつも、口に出すことはできない…
そんなテンションのやけに高い2人(葉月&先輩)と不機嫌オーラ全開の要、そして何故かこの状況を一番客観的に見ている私…
以上4名を乗せた車は目的地へと向かったのだった。