Last Escort 2

□晴れのち蒼
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「また雨だよ〜蒼…」


ここのところ、ずっと雨つづき…
まぁ、梅雨だし…仕方ないとは思うけど…
せっかくの外出、雨より晴れがいいと思うのは当然だと思う。

服も濡れるし、泥もハネるし…


いつからだろう…雨が嫌いになったのは……


子供の頃、長靴を履くだけでもウキウキした。
全身ずぶ濡れになることも厭わず雨の中遊びまわっていた。

大人になるにつれ、現実的になって、濡れた後のスーツの手入れが面倒だとか、クリーニングに出さないといけないとか…そんなことばかり考えてしまう…





でも、この男…「神崎 蒼」は違った


傘を持つのがこんなに嫌いな人を見たことがない…

「あっちへフラフラ、こっちへフラフラ…人にぶつかるごとこっちが謝らないといけない!子守しているのと同じだっ!」

そうこの男は言ってのけたのだ。
初対面でクライアントがずぶ濡れで現れたものだから、私は相当面食らった。

まぁ…水も滴る何とか……っていうのもないではないけど…

その後の話を聞いても蒼は、雨女ならず、雨男らしかった。

雨と空の蒼(あお)。正反対な気がするけど…


私はどっも好き。


冷たい雨にうたれて心も躰も潰れそうになったけれど…

貴方の名前…雨上がりの空の蒼さに救われた

貴方の涙は、空から落ちる雨なんかよりも暖かく、切なかった
切なさと同時に、柔らかな日差しの暖かさを感じた


私はこの人のために何ができるだろう…

突き放した言葉とは裏腹に、独りが嫌いなこの人に…







「仕方ないだろ?梅雨だからな」

蒼はソファーにくつろぎコーヒーを飲みながら、経済新聞に目を落としている
また、株価のチェックしてるな…


「…そんなこと分かってるけど……」


私は不機嫌を装って、蒼の隣に座った


「だって、家の中でじっとしているだけだもん…せっかく新しい服、買いたかったのに…つまんない…」


私は脚をブラブラさせながら独り言のように呟いた


「ほぅ…?」


蒼は新聞をテーブルに置いて、私に顔を向ける


「この俺がいるのに、つまらないとはたいした度胸だな……余程かまってほしいらしいな…」


「ちょっ…!!顔近いって!よくない顔してるって!」

蒼は質の悪い笑みを浮かべて、私との間を詰めてきた


「そんなこと言うのはどの口だ?……塞いでやる…」


「――んぅ!!」


私はソファーに押し倒され、言葉通り、口を塞がれてしまった…




「――ぷはっ!!いつも強引なんだから!!」


「フン…俺がいるのにつまらんなんて言うからだ」


この俺様男はぁ!!

「……部屋の中ですることもあるだろ…?」

ヤバい…この笑みは危ない…

「えぇ!?な、何かなぁ!?」

私は迫り来る蒼から目をそらすかのように、窓の外を見た


「あっ!晴れてる!!蒼、買い物つき合ってよ!!」


先程までの雨が嘘のように晴れ渡っていた

そんな私の喜々とした顔に気がそがれたのか、腕を押し退けると簡単に解放された


「やった!日頃の行いがいいからだね!どんな服、買おうかな♪」


「……おい…帰ってきたら、覚えておけよ…?」



私はビクっ!っと反応してしまったが、聞こえないフリを装って出掛ける準備を始める







私の蒼(あおい)を、空の蒼(あお)に見せるために


ねぇ…?
貴方が私に見せてくれる色は何色かな…







END
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