水の旋律

□乙女心と秋の空
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3日前の夜のこと、きらが風呂から出て、自室に戻った時、携帯が鳴った。ディスプレイを見ると知らない番号だ。不審に思いながらも、電話に出ると、よく知った声が響いた。

「よ、はねっかえりの姉ちゃん、寝てたか?」

この言い方は、まぎれもなく片瀬である。どうして、片瀬が自分の携帯番号を知っているのか、疑問に思い、きいてみようとすると、「陽菜から聞いた」の一言。

まぁ、この二人の仲のよさには、周りの人間が照れるほどのものだけど……、そう思っていると、片瀬が矢継ぎ早に用件を告げた。

「お前さ、優から何か聞いてないか?」

きらには、片瀬が言っていることに、心あたりがない。昨日、茶呑書房へ一緒に行ったが、相変わらず、京にぃと険悪の仲ではあったが、いつもと変わらない様子だった。
しかし、昨日のことを思い出しているうちに、そういえば、日曜日の予定を尋ねられ、「部活がある」と言ったら、妙に安心したような顔になったような……?と、きらが考え込んでいると、

「やっぱりな…、よし、この優しい片瀬さんが、お前にいいことを教えてやろう。今度の日曜日、柏木高校の文化祭なんだとよ。一般開放するんで、お前も行けるってわけだ。それで、ひとつ提案なんだが、俺とお前と陽菜の三人で、その文化祭、行かねぇか?」

確かに興味がある。学校での優を、尚和高校の生徒である自分は、どうしても見ることはできない。一人で行くには、抵抗があるが、片瀬たちも一緒である。しかし、日曜日には部活がある。だが、祭り好きなきらに文化祭のことを黙っていた優も、あやしい…と思い、悩んだ末、やっぱり優の様子が気になり、きらは片瀬たちと行くことに決めた。

「うん、行くよ。優が黙っていたことも気になるし……、それに、三人で行ったら楽しそう!」
と、きらは喜んだのもつかの間、

「あ〜…、悪りぃがな、お前さ、一緒に優を見つけてやっから、それからは別行動にしようぜ」

つまり、きらはデートのダシにつかわれたのだった。まぁ、そんなところだと思ったけど…

「いいよ…、その代わり、絶対、優見つけてよね」
と交渉が成立した。
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