水の旋律

□月明かりの誓い
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「はい、新年、あけましておめでとう〜!!」

「…………」

「んだよ、新年早々、しけた面しやがって…はい、元気よく、おめでとう!!」

「………おめでとうございます……」

「元気よくなんて、言えるかよ!!無理やり連れてきたくせに!!」

「そうですよ、いきなり連れてこられて、びっくりしましたよっ!!」

そう、優ときらは、今、加々良家にいる。初詣を終えて、優の家に向かう途中に、片瀬の手によって連行(?)されたのだ。しかも、ベンツで。

「おまけに、ベンツで来るから、誘拐かと思いましたよ!」

「いいじゃねぇか、VIP待遇だぞ!?喜べ!!一生に一度、乗れるか乗れないかだぞ〜」

「「…はぁ…」」

きらと優は、同時にため息をついた。毎年恒例、加々良家主催の新年会だが、今年の幹事は片瀬であった。片瀬はこのために、着々と準備を進めていたのだった。

「見たことのない人に連れてこられて…しかも、行き先は尋ねても答えてくれないし、優はずっと、不機嫌だし……車内がどれほど居づらかったことか…!!せっかく、ベンツに乗れたのに、楽しむどころじゃ、ありませんよ!!」

「まぁ、新年早々、そう怒るなって……おい、優、ちょっとこっちへ来い…」

そう言って、片瀬は優を部屋の隅に連れて行く。

「??」

そんな二人に首を傾げるきら。

「なんだ!?ひっぱるな!この馬鹿力!!」

「馬鹿とはなんだ!馬鹿とは!!……そうだな、ほっそい優ちゃんには、羨ましい限りだよなぁ〜」

「なんだとーっ!!」

「まぁ…そんなことより、優…」

きらに聞こえないように、小声になる片瀬。

「なんだ?」

その声につられて、優の声も自然と小さくなる。

「はねっかえり、着物、似合うじゃねぇか…」

「は!?いきなり何だ?…当たり前だろ……あいつ、もともと素材がいいから……」

「…って、何でお前がテレる…?」

「うるさい!!」

ところどころしか聞こえないきらには、何がなんだか分からない…

「まぁ、落ち着けって…あのな…お前、はねっかえりに言ってやったか?」

「何をだ?」

「だぁ〜かぁ〜らぁ〜」

ここで優の肩をガシッと掴み、小声で言う片瀬。

「似合ってるぜ、きら★とか、キレイだぜ★……っとか、なんとかあるだろ…」

「そんなクサいセリフ言えるかっ!!」

「ん?オレは言えるぞ?愁一も言ってるじゃねぇか…」

「お前らと一緒にするな!!」

「そんなに怒るなよ…たまには、言ってやってもいいんじゃないか?いくら想っていても、言葉にしないと、相手には伝わらないんだしな…」

「……分かってる…」

「つっても、陽菜の方が可愛いけどな♪」

「なんだと――っ!!!!」

きらは、そんなじゃれあっている二人を、「またか…」と思いながら見ていた。


「哲生〜?」

そんな中、二人を静かにさせるかのように、廊下から声が聞こえてきた。

「え!?白石先輩?」

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