水の旋律
□あなたに染まる
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『祝!新社員!新卒の方々!!春の紳士服大バーゲン!!』
番組の合間に流れるCM
片瀬と陽菜はぼんやりとそれを眺めていた
「そっか〜…もう、そんな季節だもんね…真新しい服に包まれると、何かウキウキした気分になるよね!」
陽菜はにこにこ笑いながら言う
「そうだな…」
CMを見ながら相づちを打つ片瀬
そんな片瀬を見ながら、陽菜はふと思った
「そういえば…哲生のスーツ姿…見たことない!!」
「そうかぁ〜…?」
「そうだよ!!いつも『ライダー』って感じの服だもん!私…哲生の正装姿、見たいっ!!」
「……。…そんなに見たいのか?」
「うん!!」
陽菜に期待されるような眼差しで見つめられては、片瀬に選択の余地はない…
「…仕方ねぇな……いっちょ、バシッとキメますか!…その代わり……」
「??」
陽菜がキョトンとした顔で、片瀬の言葉を待つ
「お前にも正装してもらうからな!」
「えぇ!?」
「んで、高級なレストランでディナーでもしようぜ?」
「いいの!?哲生!!」
「あぁ…」
「わぁ〜い!デートだ!デート!!」
「……大人の、な…」
「えっ?哲生、何か言った?」
「いいえ?なんにも?」
ボソッとつぶやいた片瀬の言葉は、陽菜には聞こえなかった