水の旋律
□繋いだ手の温もり
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「やぁ〜と、来たか!はねっかえり!」
「え?片瀬さん!?」
部活を終え、下校しようと校舎を後にすると、何やら校門前が騒がしい。
何事かと思いながら校門に向かうと、バイクに跨る片瀬がこちらを覗き込んでいる。
どうやら騒がしかったのは、片瀬が原因のようだ。
下校する生徒たちの興味津々な視線が突き刺さるきらだったが、それを無視して片瀬に駆け寄った。
「まったくよぉ〜…このオレ様をアシに使うとは…って、今はそんなこと言っている場合じゃねぇ!」
「何かあったんですか?」
学校にわざわざ迎えに来るなんて、よほどのことがあったのだろう。
きらは嫌な予感を覚えた。
「いいから早く乗れ!ほら!陽菜のヘルメット、被っておけ!」
片瀬に陽菜用のヘルメットを押し付けらる。
「説明して下さいよ!」
「んなもの後だ!早く優のアパート行くぞ!」
「え!?優に何かあったんですかっ!?」
「行けば分かる!ほら、早く乗れっ!」
片瀬の焦る様子が尋常ではなく、とにかく優に何かあったのは確かようだ。
きらはヘルメットを大慌てで被り、バイクに跨った。
「しっかり掴まっていろよっ!」
片瀬はきらの返事を聞かずバイクを走らせた。
きらは片瀬の後ろでしがみつきながら、あの時のことを思い出していた。
きらが片瀬のバイクに乗ったのは、これで2回目だ。
初めてバイクに乗った時、優はきらの腕の中でぐったりして、もう目覚めないんじゃないかと、不安で仕方なかった。
今回もその時と同じ不安を感じずにはいられない。
(優!!お願いだから無事でいてっ!)
きらはその不安をかき消すかのように、片瀬に強くしがみついた。