Novel
□素直な意地っ張り
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「剣心つまんな〜い!!散歩でも行こうよ〜」
「たまにはゆっくりするのもいいでござるよ、薫殿。拙者は洗濯をしてくるでござる」
「あっ、けんし〜ん…」
今日はひさしぶりに出稽古も休みで、本来ならばゆっくりする所なのだが…好きな人と同じ屋根の下。年頃の娘がごろごろ出来るわけもなく、かまってほしいと何度も声を掛けてみるのだが…。
(も〜朝から掃除に洗濯に買い物に…全然わたしにかまってくれないじゃない!!もうすぐ夕方かぁ…ばか剣心!!)
薫の気持ちを知ってか知らずか…いつも通りに家事をこなし、お出掛けの誘い一つもしない剣心。薫の淡い期待はあっさりと裏切られ、陽は既に傾き始めていた。
(一日中休みなんてめったに無いんだから…どうにかして剣心を外に連れ出してやるっ!!)
ぶつぶつ言いながらなにやら考えている薫。ふと卓袱台に視線を移すと、そこには食べ終えたみかんの皮があった。
(もうみかん無くなっちゃった…また買ってこないとなぁ。みかんかぁ…みかん…みかん…そうだ!!みかんだ!!)
これしかない!!と言った表情で、拳を握りしめる薫。だがまだ問題はあるらしく…また一人何かを考え始めた。
(剣心にみかんを買いに行ってもらうとして、どうやってわたしも一緒に行くかだなぁ…「寒いから薫殿は家にいるでござるよ」とか言われそうだし…う〜ん、どうすればいいのかなぁ…)
頭を抱えたり、首を傾げたり、寝っ転がってみたり…端から見たら間違いなく不自然な行動をとっている。
(薫殿はどうしたんでござろうか??)
洗濯が終わった剣心が先程から不思議な行動をとる薫を見ていたが、どうやら薫は気付いていないようだ。