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□しあわせのはな〜開花二日から三日
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翌日。
「三成殿ー」
また城内で幸村に呼ばれ、駆け寄られた。
「秀吉殿はどちらにおられますか?」
同じ台詞。
「秀吉様なら自室にいるぞ」
「そうですか。ありがとうございます」
幸村は笑顔でお辞儀し、踵を返し、また駆けて行った。
今度は何の用だ?
昨日、町から帰ってきてから、やたら秀吉様と幸村は時を共にしていた。
小さな声で何やら話し込んでは、時折、秀吉様が声を上げて笑う。
何の話をしているのだろう…?
俺は無意識に幸村の後を追っていた。

秀吉様の部屋の前まで来て、会話を盗み聞きするか躊躇った。
こそこそするのは嫌いだ。
いっそ、中に入る方が潔い。
しかし、
中に入って何て言う。秀吉様にも幸村にも特に用事はない。ただ、二人がどんな話をしているのが気になるだけだ。
他の誰かならこんなには気にならない。秀吉様と幸村だから…数少ない俺が興味ある人物だから。
まあ、後でどちらかに尋ねればいい。二人共正直だから尋けば答えてくれるだろう。
そこまで考えて、俺はその場を去った。
自分自身が忙しない。
落ち着かない。
何だか俺らしくない…。

「幸村、今日、秀吉様と何を話していたのだ?」
夜、二組の布団を並べ、そろそろ床に付こうとしたその時、疑問をぶつけてみた。
「え?」
若干裏返ったような声が返ってきた。
「…………」
そして沈黙。
「…三成殿、明日の晩まで、待ってて下さい。私、頑張りますからっ!」
前半俯き気味に呟いて、後半叫んで、「お休みなさい」と幸村は布団に潜った。
明日の晩……?
頑張る……?
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