書物棚2

□よとぎのこころえべんきょうちゅう。
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「離しません、三成殿」
三成殿の腕が背に回る。
頭を撫でてくれた。
今…幸せ過ぎる。

「三成とはうまく行った様じゃな。そんな訳で今から幸村はわしの馬廻りじゃ」
「…?」
翌朝、秀吉殿に呼び出された。
「あの…」
「じゃから〜幸村は今からわしの小姓じゃなくて馬廻りじゃ、と言ったんさ」
『馬廻り』とは、大将を護衛する仕事。
大将の乗る馬のすぐ側で護るから馬廻り。
秀吉殿の命を預かる仕事だ。
でも、三成殿と何の関係が…?
「…あ、ありがたき幸せです!」
何だかよく解らないけど、馬廻りになると言う事は、秀吉殿は私を信頼してくれていると言う事。
ここはお礼を言うのが正しい…はず。
「幸村、頼んだぞ」
「はい!」
とにかく、これは嬉しい事だ。早速父上に知らせないと!
「うむ、いい顔じゃ。わしの小姓と恋仲なんて三成も居まずいからのぉ」
「え?」
「いやいや、もちろん幸村ならわしの側を任せられるからの任命じゃぞ」
つまり…つまり…秀吉殿の幕僚(三成殿)と小姓(私)がそうゆう仲になったと言う事が世間に広まると…。
何だか評判悪いですね…。
男色は好まないとはいえ秀吉殿の小姓と寝た三成殿、それを許した私はあまり良くは思われないだろう。
「では、しばらく外では三成殿との仲がばれないようにしないと、ですね」
小姓を辞めたばかりに発覚しては隠す意味がない。
「そうじゃな」
「お気遣い、ありがとうございます」
あれ…?
「秀吉殿はどうして私達がうまく行ったと…?」
煩かったとか?
「あ〜…ねねが…」
どかん。
秀吉殿の言葉を遮ったのは騒音。
「三成っ!危ないじゃないの!悪い子だねっ!」
廊下に出ると、壁に扇が突き刺さっていた。
壁の前の部屋では三成殿が休んでいる
そしてあの扇…。
「ねねがな、見ておったんじゃよ、お前さん達を。成り行きが心配じゃからとな…わしは…わしは止めたんじゃよ…ごにょごにょ」
言い辛そうに秀吉殿。
「……!」
さすがに人に見られていたとなると恥ずかしい…。
部屋を覗くと三成殿が布団に丸まっていた。
「ねねも三成も落ち着くんさ〜」
秀吉殿が仲介に入る。
この騒ぎ、どう止めたらよいのやら…でも、悩ます頭は決して痛いものではなかった。

終わり。
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