書物棚
□黒装束。
1ページ/6ページ
天下人豊臣秀吉没後、徳川家康が前田利家と裏取引を行って天下を狙うとの情報を掴んだ石田三成。
秀吉様の天下を狸なんぞにくれてやるかっ!
秀吉の世を守りたい三成は激怒した。
「……と、いうわけで家康と利家殿との取引を邪魔しようと思う。明日」
ここは三成の居城、お向かいに胡坐をかくは家臣の島左近。
「随分突然で……」
「明日、利家殿の屋敷で家康との茶会が開かれる。ここで多分、二人の取引が行われるはずだ」
三成はそこまで言うとずるずると部屋の隅に置いてあった桐箱を引きずり、開ける。
中には新品の黒い着物。
「邪魔しに行くとはいえ茶会だ、いい格好をせねばと新しく揃えた」
真っ黒な着物を摘み上げ、左近に見せる三成。
「茶会に黒装束。確かにぶち壊しですな」
華やかな茶会に全身黒づくめの者が入ったら場の空気は悪くなる。
なるほど、と頷く左近。
「ん?単に俺が黒好きだからこれにしたのだが」
なんですと?
黒……そうですね、殿は黒い着物好きですね……。
左近の考えと違う三成。
ちょっと(?)天然な殿も可愛らしい。
まぁ、いいか。
触り心地のいい着物を気に入ったのか何度もなでなでしている三成。左近はそこで茶会ぶち壊し作戦に一役買えそうなある事を思いついた。
黒づくめで……――。