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□左近の謀反、三成の受難
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大坂城内部の豪華な寝台が置かれた部屋は天下人・豊臣秀吉の寝室。
その部屋で秀吉家臣の石田三成は真っ白になった頭を抱えて、泣きながら座り込んでいた。
原因はというと――。
この寝台を秀吉の部屋に運んだ時、何を思ったのか秀吉はその場にいた三成の家臣・島左近にここを情宿代わりに使ってよい的な事を口走った。
三成は色ネタ好きな秀吉の軽口かと思って流したが、左近は本当に秀吉の言葉通りの事を実行した。
三成は半ば無理やり左近にこの部屋に連れ込まれ、抱かれた。
二人は恋仲なので、抱かれる事は何てことない。
三成を凹ませたのはその現場を敬愛する秀吉に見られた事だった。
ここは秀吉の部屋だ、いつ主が来るとも限らない、秀吉も『左近が使ってる時覗く』宣言をしていた。
その上で事を行ったのだ、秀吉はわかっていて三成達の関係を見せた、と思っているに違いない。
もう秀吉様の顔を見れない…。
頭を鐘突きで叩かれたような気分だった。
三成とは逆に左近は平然としている。
丸くなる三成の背後で何やら這い蹲って畳を凝視していた。
何をしているのだ?
三成が目だけで問いかける。
「激しく動いたので大切なお守りを失くしてしまいました。どっかに飛んで行ったのかもしれません」
すごい機嫌がよさそうな左近。
俺の生気は左近に吸い取られた。
三成は元気な左近を見てそんな事を思った。
「…お守りなんか持っていたのか?」
「小さいのを腰に付けていたんですよ、実は」
左近は寝台の敷布を上げて、台の下の空間に入った。
台は高いので空間は結構広かった。
左近と三成が一緒にすっぽり入りそうなかんじ。
そんな所にあるはずない…。
三成は横目で左近を見つめている。
体が痛くて動きたくないし、動く気力がない。
ぼんやりと締め切った襖を見るともなく見ていると小男の影が見えた。
秀吉様だっ!
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