書物棚2

□無邪気な宣戦布告。
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大坂城内。
「失礼致します」
襖の向こうから声がして、豊臣秀吉と真田幸村は視線を向けた。
天下人の秀吉と、その小姓を勤める幸村は調度談話中だった。
音もなく開く襖。
向こうには頭を下げる秀吉の家臣――石田三成がいた。
「おぅ、三成〜」
名前を呼ぶのは頭を上げてよい、の合図。三成は秀吉に向いた。
「それでは、これから越前に行って参ります」
「んむ。吉継によろしくな♪」
見れば三成は旅支度をしている。
越前…吉継…。
その単語から幸村は三成が越前を治める大谷吉継に会いに行く事が読み取れた。
「吉継殿に会いに行かれるのですか」
「あぁ、見舞いにな」
幸村の問いに三成が答える。
「お見舞い…?吉継殿はどこかお悪いのですかっ!?」
基本的に幸村は豊臣に来てから秀吉の家臣の誰もに懐いている。
吉継もその一人で、特に、好意を寄せている三成の親友とならば幸村が好かないハズもない。
病か怪我か分からないが、どこか悪くしているとなれば心配である。質問の声も少し大きくなっていた。
「最近体調が良くないそうでな…ほんとはわしが見舞いに行ってやりたいんじゃが…遠征するには時間がな…。吉継の家が近所にあったら毎日でも行ったるわ!」
秀吉は身振り手振りを付けて大袈裟に言った。
「秀吉様のそのお言葉を聞いただけで吉継も喜びますよ」
三成はまるで自分の事のように喜びの笑みを浮かべた。
「あの…三成殿…。少し…時間を下さいませんか?」
申し訳なさそうに幸村が割り込んだ。
「どうした?幸村」
「吉継殿に文を書きたいです。少しでも、元気を付けられるように。…駄目でしょうか…?」
三成と秀吉は顔を見合わせる。
二人に幸村の願いを断る理由はなかった。
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