書物棚2

□秘密じゃない看病。
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真田信之が上州・沼田より信州・上田を訪れた。
弟が病で倒れたと聞き、特別速い馬を走らせて。
信之と一つ下の弟・幸村は非常に仲の良い兄弟。
弟が倒れたと聞いて、信之は血相を変えて居城・沼田城を飛び出した。
真田は沼田を信之、上田を信之の父・昌幸が治めている。
幸村は父と共に上田で暮らしていた。

「源次郎っ!!」
俺は上田城に着くや否や弟の名を叫ぶ。
俺の声を聞き付け、何人かの侍女や真田の家臣達が出迎えてくれた。
「出迎え御苦労。すまん、すぐに源次郎に会わせてくれ」
会釈をして俺は知り尽くした上田城を歩く。
真っ直ぐ目指すは源次郎の部屋。
「こうやって繋いで支えていますね」
源次郎の声か漏れ聞こえた。思ったより元気そうで安心した。
はて…話している相手は誰なのやら…?
「…ありがと。幸村」
相手の声が聞こえた。
石田三成殿だ。三成殿は俺と源次郎の共通の友人だ。父とも仲が良い。
弱々しい声だな…病で倒れたのは源次郎ではなかったのか?三成殿の方が病人ぽい声たぞ。
とにかく、源次郎に会いたい。三成殿とも話がしたい。
襖に手を掛けると、
「……あっ…ぁ…」
何やら甲高い三成殿の声。
……二人共、何をやっているのだ???
思わず障子紙を指で、
ぷすり。
「……!」
穴の先では源次郎の上に三成殿が乗っていた。
二人は騎馬兵ごっこや指圧や灸治療やらをしているわけじゃない。
二人は手を繋いで。
二人は密着して。
…………。
上下に動いていた。
俺はこれが何をしているか分からない子供ではない。
源次郎と三成殿は……馬鍬っていた。
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