書物棚2

□お酒ともののふ。
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大坂城内。
酒臭い……。
ふと漂って来た酒の強い香りに眠りを覚ます石田三成。
辺りは夜の真っ暗闇。
「……っ!」
一人で床に就いたはずなのに目の前に人がいる。
布団の中に誰かいる。
自分の横に眠る誰かがいる。
「…ゆきむら…」
闇に慣れた視界に浮かび上がって来た人物はよく知った者だった。
恋人である男――真田幸村だった。
漂う酒の香りは幸村からする。
彼はかなり飲んでいる。
幸村は三成との共通の主である豊臣秀吉と酒を飲んでいた。
宴会好きの秀吉が酒好きの幸村を誘い、あと、他にも家臣を誘う。三成は酒が苦手で少し付き合っただけで自室に戻り、眠ってしまった。
何故、幸村がここに?
もう深い夜。宴が終って、酔い潰れて眠ってしまったのだろう。
わざわざ俺の所に……。
三成は幸村の艶のある黒髪を撫でた。
可愛い奴。
そう思った。
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