書物棚3

□狐は布団で丸くなる?
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ぽかぽか陽気の春。
こんな日は布団干し日和だ。
そう思った、大坂城在住の豊臣秀吉の妻・ねねは素早い動きで城中の布団干しを始めた。
各部屋の押し入れから布団を出しては、その部屋の日光の当たる場所に広げる。
「三成、邪魔するよ〜」
机仕事をしていた石田三成の部屋にねねが回り来た。
三成はあからさまに嫌な顔で振り返る。
「何ですか?」
「天気がいいからお布団干すのよ」
そう言いながら各部屋でやった手順を手際よく行う。
出して。広げて。日の当たる場所へ置く。
三成の机に被る事はなく、三成はすぐにねねを無視して仕事に戻った。
「また後でしまいに来るからね。お仕事頑張って」
ねねは風の様に去って行った。

しばらく机に張り付いていた三成。文字書きの細かい作業に目が疲れてきた。
ふと横を向くと視界に布団。
飛び込みたい欲求が沸き上がった。
柔らかいだろうな。
温かいだろうな。
気持ちいいだろうな。

ぽふ。

三成は欲に負けて布団に倒れた。
ぬくい……♪
体に伝わる優しく心地よい温かさに三成は眠気に襲われた。
眠ってはいけない。まだ仕事がある。
眠ってはいけない。夜に眠れなくなる。
しかし瞼は重くなる。
少しだけ…少しだけ…半刻だけ…。
三成は目を閉じた。

「…ん…」
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