書物棚3

□恋は軍略より難しく。
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「おやつよ〜手を洗って食べにいらっしゃーい」
ねね殿のいつもの声。
大坂城に来てからほぼ毎日聞く。
ねね殿は料理上手で、この『おやつの時間』が楽しみであったりする。
「行きましょう、三成殿」
私は横に座る三成殿に声を掛けた。
私達は川中島、桶狭間、と、過去の合戦地図を広げて軍略談義をしていた。
「……行かないと余計に煩いからな」
三成殿はしぶしぶ立ち上がる。
口ではそう言うが、本当はねね殿の菓子がお好きらしい。
だから素直になれない三成殿の為にいつも私から誘う。
ねね殿のもとに向かうと人が集まっていた。
「二人で何して遊んでたの?」
ねね殿が駆け寄る。
「遊んでいませんよ」
三成殿が言う。
「戦の勉強です」
私が答えるとねね殿は、
「戦はもうないの!うちの人が頑張ったんだから!」
大きな声で言った。
日の本は秀吉殿によって統一された。
だから後は平和な日々が続く。
だが…三成殿も私も安心出来なかった。
徳川家康。
今はおとなしく従っている様に見えるが、家康は油断ならない。
私達は彼を警戒し、軍略鍛練を怠らなかった。
「別に構わないでしょう、勉強する事は」
三成殿がねね殿に言い返す。
「そうだな、三成は勉強した方がいいな」
「戦下手だからなぁ…ふん」
正則殿と清正殿だ。
けらけらけら。
笑う二人に、怒るねね殿。
三成殿はただ黙っていた。
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