書物棚3

□籠の中の恋仲。
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初春の越前。
石田三成は大谷吉継を訪ねた。
吉継は長く、病を患っていて、三成はよく見舞に行っていた。
吉継は恋仲である三成の訪問に喜んだ。普段は寡黙な吉継は上機嫌に饒舌になった。
「最近は体調もいい。昨日は梅を見に遠出した。よい香りであった」
こう話すが、吉継は病で視力と歩く能力を失っていた。
梅の場所までは籠車で行き、見るのは心の目で楽しんだのだ。
「そうか。それはいいな」
病に気落ちしていない吉継の様子に三成は喜んだ。
「今日も行かれますか?石田様もご一緒で」
茶を点てていた吉継の小姓が言った。
吉継は三成を見た。
「あぁ」
三成は笑みを作って答えた。

からから…ころころ…。

籠車が進む。
力自慢の大谷家臣が二人で車を引く。
車には吉継と三成。
車は吉継の為に作られたもので、中で横にもなれるように大きく作られている。
初め、三成は乗るのを断ったが、先の小姓に強く勧められて乗った。
本音は吉継と乗りたかったので相乗りは嬉しかったりする。
振動少なく乗り心地のよい車の中。
誰も見ていない。
自然と吉継と三成は体を寄せ合い、手を繋いでいた。

からから…ころころ…。

「触れてもいいか?」
吉継が囁いた。
「……あぁ」
三成は小さく答える。
吉継は三成に触れる事を特に好んだ。
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