書物棚3

□驚愕なお付き合い。
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大谷吉継は今、悩んでいた。
その種は最近、吉継の仕える豊臣秀吉のもとに人質としてやって来た真田幸村。
幸村の性格には問題はない。彼は誰からも好かれるような人間だ。
滅多に腹は立てず、捻くれた所もなく、人と交わる時にはいつも笑顔で場を和ませる。
吉継も幸村を気に入っているし、よく会話もするし、出掛けたりもする。
吉継にとっての幸村の問題は…幸村が石田三成に恋慕している事だった。
吉継も同じ思いがあるのでこれは頭を悩ませる事であった。
家族と家臣と秀吉と自分以外に距離を置く三成。
その三成が幸村とは仲良くやっていた。
それが余計に吉継の気を重くさせる。
普段、三成の対人態度の悪さを指摘している吉継だったが、複雑な思いが巡る。
そんな事を悶々と悩む日々であった。

「吉継殿、いらしゃいますか?」
屋敷で読書していた時、外から声がした。
「幸村」
門の前には幸村。吉継は笑顔で出迎えた。
「どうした?」
「今…お暇ですか?」
「まぁ」
「良かった。三成殿に吉継殿は本を沢山持っていると聞き、吉継殿が宜しければ、本をお借りしようかと」
幸村との対面は楽しいが、その口から『三成』と出ると嫌な感情が湧く。
吉継は何とか笑顔のまま幸村を屋敷に通した。
大量の書物が並ぶ部屋に幸村を案内すると、幸村は目を輝かせた。
「こんなに…迷っていまいそうです」
「好きなだけ持って行っていいぞ」
「はい!ありがとうございます」
幸村は書物棚を物色し始めた。
どこか幼い空気の幸村は吉継にとっては弟か子供の様に可愛かった。
それが吉継の悩みを膨らませる。
幸村の事は好きなのに三成が絡むと頭が痛くなる。
「三成殿の事好きですよね?吉継殿」
本を選びながら幸村が唐突に問い掛けた。
「…あ、あぁ」
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