書物棚3

□油断出来ないお付き合い。
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「吉継殿の事も好きですよ」
大坂城の一室にて、並んで鎮座する大谷吉継と真田幸村。
幸村は唐突に口を開いた。
二人は人待ち中。
今日は加藤清正と福島正則との会談。
政務の話をする予定だ。
豊臣秀吉が天下人になり、その家臣達は皆が笑って暮らせる政治に大忙しだ。
特に秀吉子飼い衆一の千恵者である石田三成。
三成は頭はいいが、態度が悪い。
その事で他者とのやり取りが円滑に行かない。
特に正則と清正とは。
そこで、三成と仲が良く、人付き合いが上手い吉継と幸村が三成代理として他者との会談に出向く事がある。
「何を突然…」
落ち着きのある吉継も幸村の言葉には顔を紅くして戸惑った。
「私はあの日、吉継殿と三成殿親衛隊を結成したわけではないですよ。三成殿も、吉継殿も、お慕いしております」
幸村は眩しい笑顔だった。
「三成殿親衛隊も楽しそうですけどね」
にこにこと幸村。
「相変わらず面白いな、幸村は」
吉継は瞳で幸村に応えた。
おれも幸村が好きだ。
和やかな雰囲気の中、足音が二つ近付く。
「悪ぃ、待たせたっ。清正の厠マジ長ぇんだよ」
「…っ…馬鹿…」
勢いよく襖が開いて、正則のデカイ声と清正の呟き。
朗らかな笑い声が響き渡り、話し合いが始まった。

会談が終わった吉継と幸村は三成がいる部屋に向かった。
「三成ー」
吉継が声を掛けるが返事はない。
二人は顔を見合わせ、そっと襖を開けた。
「三成殿っ!?」
中の三成は倒れていた。
慌てて駆け寄ると三成は眠っていた。
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