書物棚3

□恋文のゆくえ。
1ページ/3ページ

「清正ー!正則ー!」
大坂城の庭で正則と槍の稽古をしていた時、秀吉様に呼ばれた。
秀吉様は手招きしている。その横には見知らぬ奴がいた。
若い男だ。誰だ?
「清正、正則。前に話していた真田幸村じゃ」
さなだ…ゆきむら…?

『近々、信州から人質が来る。あの徳川の大軍を打ち負かした真田昌幸殿の倅じゃ』

そう言えば、秀吉様がそんな話をしていた。
幸村は俺達に深々と頭を下げ、自己紹介をした。
「幸村はお前さんらと年が近い、わしよりも話しやすいじゃろ。大坂の兄となり、仲良くしてやってくれ」
「よろしくお願い致します」
幸村が再び頭を下げる。
兄…と、言うことは俺達より年下なのか。
「しゃあっ!俺は正則だ!『正則ア・ニ・キ』と呼んでもいいぜっ!」
正則がデカイ声で叫ぶ。
おいおい、そんな馬鹿みたいに…幸村が引くだろう…。
心配とはよそに幸村は正則と談笑を始めた。
こいつ…もう馴染んでいるのか?
「俺は加藤清正だ。よろしくな、幸村」
「はい、清正殿」
幸村が笑い応える。何だか可愛い弟が出来たみたいだな。

後日。
「清正殿ー?」
自室で築城研究をしていた時、襖越しに声がした。
「幸村か。どうした?」
「すみません、筆記具を貸して頂けませんか?」
「あぁ、いいぜ」
硯、墨、筆と一式渡す。
「紙は?」
「紙は自分で買って参りました」
紙は貴重なものだ。さすがにもらう訳にはいかないとでも思ったのだろうか?
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ