書物棚2

□家族ごっこ。
2ページ/7ページ

三成が重症ではないと分かると虎捕獲の話は流れ、秀吉は粥を持って幸村と三成の部屋を訪れた。
秀吉登場に三成は体を起こす。が、体中に激痛が走ってすぐに布団に引き戻された。
「あぁ、無理せんでええ」
「申し訳ありません……」
三成は秀吉に目伏せする。
「いやいやいや、おみゃあさんが病でなくて良かった」
秀吉は三成の頭を撫でた。
すぐに執務に戻ります。
三成は言いかけた言葉を飲み込んだ。言うと幸村が責任を感じて気を悪くさせてしまいそうだったから。正直者の三成にしては珍しい気遣いだ。それだけ三成にとって幸村は大事な人だった。
「動けるようになったら堺の町に行って欲しいんじゃが、頼めるか?」
秀吉が顔を覗き込む。
「はい」
三成は即答した。
「正澄のおかげで堺も随分落ち着いたようでな。様子を見て来て欲しいんさ」
正澄とは三成の実の兄。
豪商により荒れた堺の都市再開発を任されていた。元は三成の仕事だったが、多忙過ぎる三成から兄に引き継がれた。
「ん?幸村。三成と一緒に行きたそうじゃの」
静かに話を聞いていた幸村に突然振る秀吉。
「え?」
「ええぞ、三成と一緒に行っても」
「でも…よろしいのですか?」
「えぇ、えぇ、わしは馬に蹴られて死にとうないからな」
「?」
からから笑う秀吉に首を傾げる幸村。三成は頬を紅らめてやり取りを聞いていた。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ