ツバサのセカイ語り物
□イキマスカ?
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(黒様と一緒に見たかったなあ…)
ファイは一人、昼間来ていたあの場所で海を見る。
青から赤に変わる海に自分の心を重ねてしまう。
赤い夕日に彼の瞳を思い出す。
…もうちょっとしたら、来てくれるかな?…
そんな風に少し期待してしまう自分に苦笑する。
…やっぱり来ないかなー…
彼の足音が聞こえないかとファイは耳を欹てた。
「あ!ファイだー♪」
しかし聞こえてきたのはそれではなかった。
「あー♪モコナだー♪おかえりー、小狼君、サクラちゃん」
「ただいまー♪楽しかったよー」
モコナはファイに飛び付いた。
ファイも笑顔で受け止める。
「良かったねー♪あー、その麦藁帽子はー?」
サクラは朝には身に付けていなかった麦藁帽子を被っていた。
「それはねー」
モコナが解説を始める。
「小狼がサクラに買ってあげたんだー♪」
二人は顔を赤くして俯いた。
ファイとモコナはそれをかわいいねと微笑む。
「見て!!」
サクラが海を指さす。
夕日の沈む瞬間。
やはりそれは美しいものだった。
(…来なかったね、黒様…)
━感動も一緒に━
━分かち合いたいと━
(…来ると思ってたんだけどね…)
しかし黒鋼はもう近くまで来ていた。
‥だん沈が陽太
洞窟から、海から、
躍り出てくる魂に、彼らは誰一人と気付かない。
太陽の明るさは次第に失われる。
すると急に突風が吹いた。
「あ!帽子が!!」
風は帽子を拐い海の上で手放される。
小狼がそれを取りに行こうと走り出した時、事件は起こった。
「キャ━━━━!!!!!」
「サクラ!!!!」
「サクラちゃん!!??」
「どうしたの!サクラー!!!!」
サクラはしゃがみ込んで頭を抱え怯えている。それは尋常では無いほどに。
「小狼君、帽子はオレが取りに行くから、サクラちゃんをお願い」
「はい!」
小狼はサクラの震える肩を支えてやった。
(一体、何があったんだ)