ツバサのセカイ語り物
□嘘笑真涙 〜甘え酒〜
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どうやらファイが酔ってしまった理由はここにあると思われる。
「犯人はてめぇらか?」
「でもね、黒鋼。今日のファイおいしいよ♪」
「そうですよ!黒鋼さん。今なら調度いい味加減ですよ」
サクラとモコナはずっと笑っている。
「モコナ達、頑張って調理したんだよ♪」
「さめない内にどーぞ」
そう言って一人と一匹は楽しそうに去っていった。
ファイは黒鋼にへばり付くように抱きついたままであった。
「黒鋼さん、続きはまた明日にでも。おやすみなさい」
小狼は次の展開が予想出来たが故に、黒鋼の部屋をそそくさと出て行った。
静かになった部屋で黒鋼は一人ため息を吐く。
ファイはぎゅっと黒鋼を抱きしめたまま離れない。
「おい!」
「好きだよ〜」
酔われたまま好きと言われても嬉しくはなく、また、黒鋼はさっきの小狼との話を遮られた事で機嫌が悪い。
「なぁ!酔ってんだったらさっさと寝ろ!」
そしてファイを無理矢理に剥がす。
「いやぁーー!!!!!!黒様…オレは黒様と…一緒に…」
言いながらファイはその場に蹲る。
その姿があまりに惨めに見えたもので、黒鋼は少し考え、ファイを部屋に返すのを止めた。
そしてファイの目の高さまで屈んでみる。
「ここにいるってか?」
「黒様…と…一緒…黒様…」
ファイの声がだんだんと震えてくる事に慌てる黒鋼。
仕方なくファイを抱えてベッドに連れていこうとする。
抱えられたファイは自分が連れていかれる先を悟ったらしい。
「黒さーまぁ、いーや!」
そして黒鋼の首に手を回し、またぎゅっと抱きつき、頬擦りした。