ツバサのセカイ語り物

□助けたいから…
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「ねぇ小狼君、落ち着いた?」


「はい…。ファイさんが…来てくれたから…」


ファイはまた笑顔をみせる。


「じゃあ、帰ろう。雨が強くならない内にね」


そして二人は戻る事にした。

当然雨はきつくなってくるものの、二人は走る事はしなかった。

ファイは小狼の歩調の重さに合わせたのだった。

人が雨に濡れても構わない、濡れていたいとも思える時。

それはとても哀しかったり、辛かったりする時。

ファイにはその気持ちがよく分かる。


二人がホテルに戻ってきた時は、もうびしょ濡れの状態だった。




ファイが小狼を部屋まで送る途中、スタッフ達とすれ違い、世話をしてくれようとするのを断った。



小狼の部屋の前にて別れる時、ファイはまた優しく笑ってみせる。


「風邪…ひかないようにね」


「ファイさんも。あの…今日は…ありがとうございました」


「ううん」


小狼が戸を閉めたのを確認し、ファイもまた部屋に戻る。

戻ってシャワーを浴びた後、機嫌を損ねさせた黒鋼の部屋に向かった。




コン……………コン


「黒るー?」


「開いてる」


中から低い声がした。
ファイが部屋に入ると彼はすぐに押し倒す。



「遅ぇだろ!!」


「別に時間決めてた訳じゃないでしょー」


「で、小僧は?」


「やっぱり黒りんも心配なんだー」


「うるせぇ!」


「素直じゃないねー」


「俺は機嫌が悪い!!」


その勢いで黒鋼の怒りはファイの身体にぶつけられる事になる。

ファイは承知の上だったが、あまりの激しさにもうやめてと請う。

しかし、黒鋼がそれを許すはずがない。



「黒…さ…。………あっ………っ」


ファイは息をつく暇も与えられず、話す事も儘ならない。


「別に声押し殺す事ねぇだろ?」



「じゃ…やめ…て!!」


「答えになってねぇ!!」


そしてまた高い声が上がってしまう。



「ダメ…動けなく…なる」

「ああ、なっちまえ!!」


「ダメ。後で…行くとこ…ある…から」


「あの男の家か?だったら、尚更!!」


「バカ!」


 
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