ツバサのセカイ語り物
□助けたいから…
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しかし翌日、風邪…
というより、熱を出して動けなくなった者が出てしまい、撮影の順序も変更されたりした。
寝込んだのはファイだった。
朝、それを知った黒鋼がファイの部屋で怒鳴る。
「てめぇ!自覚あんのか!?なんでそうやってすぐ風邪をひく!?」
「黒りん、頭に響くからやめて」
「お前が悪い!!」
「…はいはい、落ち着いてー」
真面目に答えないファイに腹が立ち始める黒鋼。
わざと大きな声を出したりする。
「真面目に答えろ!!!」
「………………」
「…聞いたぜ。昨日、小僧と一緒に雨に濡れまくって帰って来たんだろ?」
「だから?」
「なんであいつはピンピンしてんのに、てめぇが熱なんか出してんだ!!」
「さあね」
「言ってやろうか?…てめぇの気が弱ぇからだ。それに自分はどうでもいいとか思って、大事に扱ってねぇんだろ?」
「それは黒様でしょー。昨日だってオレの躯に八つ当たりしてたくせにー」
「それとこれとは話が別だ!」
「だからー、大声…」
その時、黒鋼はファイの胸倉を掴んだ。
更に息苦しくなったファイは眉をひそめる。
「…どうして?オレが風邪ひくくらいで、そんなに怒る事ないでしょ…」
「気にくわねぇ!」
「…何が?」
「てめぇのその心の弱さだ!」
「………オレは…」
「…甘えてんのか?諦めか?それとも…」
「…………」
黒鋼はまた一段と強くファイを掴み、引き寄せる。
「死にてぇか?」
その言葉を聞いて、ファイは瞳を閉じて顔を背けた。
沈黙が訪れる。
「聞いてんのかよ!!」
「………出てって…」
黒鋼の眉間の皺はやはり増えた。
その後、ファイをゆっくり放すと、部屋を出て行った。
(………また怒らせちゃったね)
消えた後ろ姿に想いを馳せる。