ツバサのセカイ語り物
□助けたいから…(続)
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風邪とは呼び難いこの病は、きっとファイを心を蝕んでいる。
風邪は風邪でなくなった。
黒鋼はこの訳を知っている。
それは
まじない…。
何故
そんな真似をした?
やはりお前は
望んでいるのか?
ある言葉が脳裏を過ぎる。
「黒鋼…、ファイは…」
あの時に聞いた“魔女”の言葉。
「ファイは望んでいるの。心の奥底で…」
ずっと彼の事を考えた。
眠り続ける彼の事。
━ファイの心の奥底は
哀な心理が支配する━
ただひたすら、彼を想った。
…どうすれば、
お前は…
ファイに背を向け、ベッドの端に腰掛けていた黒鋼。
沈黙の中、ずっと待った。
その時、雲の隙間から射した光が、一瞬にして眠るファイの躯に刺した。
それが予期する事に繋るならば。
………………!!
突然後ろで咳入り始めたファイに気付く。
「おい!しっかりしろ…」
中途まで起こしていた体を支え、背中を摩り続けるが、一向に止まる気配がない。
激しさだけが増すばかり。
ファイはぐっと目を閉じてその苦を耐え忍ぶしかなかった。
凄まじい苦痛もまた尋常ではない。
見るに耐えない黒鋼はファイの頭に手をやり、彼の苦しそうな背中にもう片方の手を回し、強く優しく抱きしめた。
しかし、腕の中でファイは激しく咳込んだまま。
苦痛の波は退くことなくファイを拐って溺れさせる。
…死ぬかもしれない。
黒鋼はずっとファイを抱きしめていた。
そして一心不乱にファイの心の波動を掴む。
掴んだ刹那、黒鋼はファイを…
呼び戻す。
それは、