ツバサのセカイ語り物3
□いつか終わる物語
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黒鋼はファイをゆっくり引き寄せ、何も言わず腕に納めた。
汲み取られた事を悟ったファイはその中で嬉しそうに目を閉じて…。
黒鋼もまた、その様子に安堵する。
音の無い時間が過ぎた後に響くのは、柔かい声と重い響き。
「ねーぇ?」
「ん?」
「知ってるー?あの日にねー、割愛されたっていう、後ひとつの“噂”…」
「どんな?」
「“私…最後は死ぬかもしれません”………みたいな、……あはは」
「…………で?」
「“オレ”の事だよー?」
「……………そうか」
その噂への気持ちはどうなのか…。
胸に甘えてくるファイの頬に手を添えた。
ファイは言葉を続ける。
「生きて終わるのもー、死んで終わるのもー、オレはねー、どっちでもいいんだぁ………」
そこで黒鋼は、ファイを抱きかかえてソファに腰を下ろし、軽い身は膝の上に乗せ…。
「で?…なんだよ?」
「えっとー、あれー?なんだっけー?忘れちゃったぁ…」
猫撫で声で言いながら、再び黒鋼の胸にもたれて目を閉じ、柔らかい表情を浮かべている。
黒鋼は、言葉の続きがあるなら聞いてやる…とでもいうように、ファイの頭に軽くに手を置いた。
眠そうなファイは、少ししてまた口を開く。
「……生きても死んでも…物語…。“オレ”の最後なんかはー、どっちでも良くてー」
「…………」
「…心に残る“最後”がいいなぁ…」
「……で、…お前は?」
「んー?」
「お前自身は、どうなんだ?」