ツバサのセカイ語り物3
□瞳に映る想いと君と
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ファイは瞳を閉じたまま、痛む喉に手を添え、静かな部屋にやっと響くような小声で話し始める。
「黒様…甘いお菓子は嫌いなのに…、甘い匂いは好きなんだ…」
「バカ野郎…。やらしい香水なんか付けやがって…」
「へへ…、だってぇ…」
身から離れた二人分の服は、床にある台本の上に覆い被さる。
そして黒鋼もまた、ファイの身に覆い被さろうとした時。
蒼を細めたファイが口を開く。
「ねぇ…今日は…」
「あ?」
「してあげる…」
「……ほぉ、珍しい」
喜びの無い黒鋼の反応に、ファイは、好きじゃないけどね…と返して体勢を変え…。
「…酔わせてあげる…て言ったでしょ…」
息混じりに言った後は、やや間を開けて、控え目な舌先で黒鋼自身に触れた。
淫らな音を微かに耳に掛けながら…。
また、時々ファイは顔を上げて、黒鋼の反応を窺ってみる。
そこで目にしたのは、彼の満足気な表情だった。
「ふふ」
ファイは彼に喜んでもらえる事が嬉しくて、ますます厭らしい音をさせたりもした。