ツバサのセカイ語り物3
□瞳に映る想いと君と
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時は過ぎ、一通り奉仕し終えたものとして、ファイは黒鋼に問うてみる。
「もういい?」
白濁液の味が残っているであろう口が、遠慮がちに開かれて…。
黒鋼は頷く代わりに口の片端を吊り上げて、ファイの頭に手を置いた。
するとファイは褒められた子供のように、嬉しそうな笑みを見せる。
「ふふ。黒様、今日はやっさしー」
「“今日は”は余計だ」
そして言葉の最後で、いつものように。
黒鋼はファイを組み敷いた。
「…………」
「…………」
一瞬、時が止まったように。
見つめ合う紅と蒼。
胸の奥底から沸く興奮に、呼吸が乱されてしまう二人。
そんな時、二人を柔らかく照らしていた部屋の灯りが、すっと消えた。
「停電?」
「知らね…」
「…真っ暗でヤるの、久しぶりだね?」
「さあな」
「黒様、愛想悪ーい」
「うるせっ」
「ひゃっ……ん…」
ファイの不意を付くのが好きな黒鋼は、この日も同じ。
一気に奥まで届いた二本の指は、ファイの躯を硬直させた。
「慣れねぇ奴…」
「だあってー」
相手の顔は暗くて見えない。
けれどもきっと頬笑んでいるのだろうと互いに思う。