ツバサのセカイ語り物3
□DOUBLE
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真夜中の三時過ぎ。
ふと目を覚ましたファイは、ゆっくりと顔を横に向けた。
すると月明かりが映す彼の表情。
それは優しさを帯ていると解っても、ファイは唇を噛んでキッと睨んだ。
「…なんだよ」
「最悪っ」
「あ?」
「とぼけないで!!」
「別にとぼけてねぇ」
「バカッ!!!!」
するとファイは口を塞がれてしまった。
「んんっ!!」
「うるせぇ、饅頭が寝てる」
「……(バカ…)」
あまりに酷い扱いをされた躯。
未だあの刺激をはっきりと覚えている。
ゆえに、苦しい。
と言うよりも、物足りなさが辛かったりする。
けれども、悔しくて自ら求められずにいるファイは、彼の手を退けて小さく一言。
「バカ…」
「泣いてんのかよ…」
「泣いてないっ…」
その言葉とは裏腹に、涙目で睨み返す。
それもまた、月明かりが照らしてくれた。
が、そんなファイの顔を、瞳を…。
黒鋼が望んでいるはずがない。
「やめろ。俺はお前のそんな顔…見たかねぇ」
言いながら静かに目を伏せた。
「…………」