novel
□欲しいのは、キミの
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俺の頬を涙が伝った。
其れが絨毯にシミを造る前に、俺より3p小さい愛しい人の背中に、自分の顔を擦り付けた。
「みず、たに…?」
俺は黙って、腕に力を入れた。
この、愛しい人を喪わない様に。
自分の中の恐怖から逃れる様に。
怖い。
何処にも行かないで。
「さかえぐち…」
俺の物でいて。
「さかえぐち…」
離れて行かないで。
「すき…」
君の気持ちを俺に教えて。
「…すきって、言ってよ」
俺のモノになって。
溢れる涙が、愛しい人の背中にシミを造った。
「…ごめんね、水谷。すごい好きだよ。水谷がだいすきだよ、俺。水谷への気持ちが大き過ぎて、すごい怖いんだ。俺、おかしくなりそうで、怖いんだ。」
愛しい人の体温が上がった。
「俺はもう、おかしくなったんだ。お前も、おかしくなって。好きだって、おかしくなって。」
愛しい人が、俺の腕の中、向きを変えた。
俺の涙をするりと舐めた。
「好きだよ好きだよ、水谷」
「うん、俺も好き」
愛しい人の後ろが絨毯に変わった。
愛しい人の頬の赤さが俺の心をくすぐった。
「「好き」」
俺達、ぜんぶが溶け合った。
...END?
07.12.25.