novel
□marriage
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「なぁ、花井。なんで男同士って結婚出来ねぇのかなぁ?」
「はぁ?」
ある暖かい日の正午。
俺と田島は向かい合って昼飯を食っていた。
早弁しているせいか、弁当を俺より早く食い終わった田島は、机の上に寝かせた腕にその幼さの残った顔を乗せ、俺に綺麗な焦げ茶の瞳を向けながら呟いた。
「どっかの国じゃ大丈夫って聞いたけど」
何故それを知っている、俺。
「んー、でも、日本じゃダメだろ?」
「あ?まぁ、そうだな」
俺が返事をするのと同時に、開け放たれた窓から入った弱い風がカーテンを揺らした。
田島に視線を戻すと、俺を見上げる透き通った焦げ茶と目が合う。
その綺麗な焦げ茶に
短く刈った漆黒の髪に
顎を乗せた小さな手に
どうしようもなく、胸が甘く疼く。
俺はその疼きに顔を綻ばせながら、田島の頭に手を乗せた。
「俺、結婚とかそーゆうの別にしなくていいと思うけど」
弁当に入ってた卵焼きを飲み込みながら、俺は田島に言った。
「なんで?」
田島は頭に乗せた俺の手に擽ったそうな顔をしながら訊いてきた。
「そんなのしなくても、好きなものは好きだし、一緒にいて幸せなことに変わりはねぇじゃん。誰かに認めてもらうとか、そんなの面倒だろ?」
「うん」
田島が嬉しそうに顔を赤らめた。
「田島は、俺と結婚したかったわけ?」
俺が意地悪をすると、田島は真っ赤になった。
「…あ、えと…」
田島は俺から目を反らして、口ごもる。
そんな姿に、可愛いなぁ、と愛しさを感じながら、田島にそっと呟いた。
「キスしてやるよ」
他の奴等に見えないように、机の中からノートを出して、俺と田島の間に立てた。
唇が、そっと触れ合う。
「これは、誓いのキス?」
「そうかもな」
END..
07.12.25.