novel

□4月28日!
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吹き抜けるような快晴の空の下。
何処までも優しい春風が悠一郎に当たってとける。

悠一郎の手が持ち上がった。

――ピーンポーン










「おう、どうしたたじ…」
「はっぴーばーすでー!!」
どんっ
「うぇ!?」
閑静な住宅街に、二人の男の声が響く。
そしてすぐに訪れる沈黙。
片方の声の主、花井梓は混乱していた。
もうひとつの声の主である田島悠一郎が自分の上に乗っているのだ。
飛び付いて来る事に慣れてはいたが、扉を開けて間髪空けずすぐだと流石に驚く。
「…あの、た…」
「はっぴーばーすでい」
悠一郎は梓の顔のまん前でもう一度呟く。
そこで梓は気付いた。


今日、花井梓は17歳になりました。


そんなことを自らの頭の中で意味もなく呟く。
そして梓はふと気が付く。
梓の部屋のなかで自分の持ってきた小さなケーキを食べる、というか貪っている悠一郎と出会ってもう一年だな、と。

いろいろあったなぁ、とさながら晩年の老紳士のように目を細める。
そしてケーキをゆっくり口に運んでいると、食べ終わった悠一郎と目が合った。
悠一郎は、その美しい真っ直ぐな瞳で、梓の瞳を覗く。
「ねぇ、俺らもう逢って一年だな」
「そうだな」
悠一郎も自分と同じことを考えていたことが嬉しくて、梓はらしくなく元気に笑った。
そうすると、悠一郎はもっと満面の笑みを顔に咲かす。


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