†その他†

□永遠に...
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ここは僕らの教室。
今は放課後だから教室にいる人なんていない。
そう思って本をひとりで読むために足を運んだのに……。
意外な人に会った。


「先生。」

久藤准は担任である糸色望に話しかけた。
先生は教卓に寄り掛かって教室を眺め回しているように見えた。
でもいつもとは違う先生。
僕はうろたえた。

「先生?」

先生は右手にナイフを持ち、今にも左の手首にその光る刃を突き刺そうとしていた。

「久藤…くん……?」

少し虚ろな瞳で僕を見上げてくる姿。心は、魂はもう何処かへ行ってしまったようで……。

僕は小走りで先生の所まで駆け寄った。

「久藤くん。」

再度、僕を呼ぶ声にいつものような生気は無く。

「私、もう生きていたくありません。」

その様子から先生は今までよりも激しく死にたがっているのだと感じた。

「先生、死にたいんですか?」

「何も信じられなくて。自分の存在価値もわからないんです。希望も無くて。首を吊るだけじゃ私は死ねません。だから確実に死ねる方法、それがこれだったんです。」

微笑みながら言う先生。先生の気持ちが痛い程伝わってきたから…。僕がいまさら生きる意味なんてものを先生に語っても無駄なんだろうなとわかった。

ごめんね、先生……。
だから、僕は、先生をひとりになんかしないよ?
先生に寂しい思いなんてさせないよ?


「先生…僕、先生のこと、愛してました。いえ、これからも愛してます。だから……先生とずっと一緒にいたいんです。」

僕は先生と向かい合う。

「先生が死ぬのなら、僕も死にます。」

先生が驚いたような顔をした。

「何故、ですか?久藤くんは……死ぬ理由なんて、無いでしょう?」

「ふふっ。先生がいない世界で、生きている自分の方が意味、無いですよ。」

僕は先生の首に腕をまわしてキスをした。

「先生。もし死後の世界があって、もしその世界で一緒にいられることが出来たら、良いですね。」

「久藤くん……。」

「先生、行きましょう?ずっと一緒にいられる世界があるなら……。」

僕はそっと先生の手首を切った。

白い肌に赤い筋が痛々しく浮かぶ。

でも先生は少し顔をしかめただけで、そんなに痛くないようだった。


「ええ。久藤くん……愛してます。」


先生は僕からナイフを奪い、僕の手首を切り付けた。

赤く深く刻まれた、生きることへの拒絶の証。


「これで、ずっと一緒にいられますね。」


この世界が先生を苦しめるのなら。こんな世界で生きている意味なんて無駄なんだ。

僕は意識が遠のいていく。

先生もだんだん冷たくなっていった。


先生は力の無い手を差し延べて来た。

僕はその手を優しく握り、そのまま先生にキスをした―――。



先生、これでずっと一緒にいられるね?


END
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