†ダブルオー†

□僕らの誕生日
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アレルヤは1人、自室で考えていた。


(僕のしたことは、本当に良かったのか―――。)


後悔はしていない。

でもやるせない。心が割れてしまうほどに痛む。


どんなに考えたって何も変わらないのに。


「はぁ。」

ため息をつく。いや、ため息が勝手に僕の口から零れた。


どうして良いのかわからない。



『お前に出来ることなんて何もないんだよ。』

突如、頭の中で声がする。



「ハレルヤッ。」


『お前は自分でケリをつけたんだ。自分で同胞をやったんだ。今更何を考える必要がある?ガンダムマイスターとして自分の過去を払拭したんだろう?』


「そうだけど――ッ。僕はただ……。」


アレルヤは何も言えなくなる。

ハレルヤの言っていることは正しいと思う。




今日、僕は自ら超人機関のことをレポートにまとめスメラギさんに提出し、任務として自分の幼い頃と同じ境遇の子供たちを建物ごと破壊した。
なんとかしたら保護出来たかもしれないけれど、殆ど確率なんてなかった。

だから、破壊した。

破壊することで僕の過去の罪を消せると思った。

けれど、それは罪に罪を上乗せさせてしまうことと同じなのだと、気付いた。


それでも僕は、ソレスタルビーイングとして……。



(そうだ、僕はガンダムマイスターなんだ。)



『あいつらのことを哀れむなら、もう二度と同じ過ちを繰り返されないように、ガンダムで世界を変えるこったな。』


「うん!」



少しだけ、心が軽くなる。


「ありがとう、ハレルヤ。」


『な、なんだッ、急に!?』


「クスクス♪」


『お、おいアレルヤッ!』



いつもハレルヤのおかげで立ち直れる。

ハレルヤのおかげで、大事なことに気付かされることだってある。

ハレルヤという存在に何度も救われた。



『そういやアレルヤ。今何時だ?』


「えぇっと……」


腕にした腕時計に目を向ける。


「標準時間で0時の2分前だよ。」


『そうか。』



急に時間を聞いたハレルヤを訝しく思う。


「ハレルヤ、何かあるの?」


『別に♪』



なんとなくハレルヤから喜んでいるような、嬉しんでいるような感情が伝わってくる。


「んー、そう?」

やはりハレルヤのことを怪しく思いながらも、ハレルヤが教えたくないようなので引き下がる。


『あ、今何時?』

再度、同じことを聞くハレルヤ。


「今は0時1分前だよ。」


『OK。つか時計ずっと見てろ、アレルヤ。』


今、身体の主導権を握っているのはアレルヤだからハレルヤはアレルヤの見ている景色しか見えない。


「わかった。」


ずっと時計を見る。

0時50秒前、40秒前、30秒前、20歳秒前………


「まだ見てるの?」

『まだ見とけ。まぁ0時になったら視線、外してもいいぜ♪』


「う、うん、わかったよ。」


そして10秒前………


『10!!9!!8!!…』

ハレルヤがカウントダウンを始める。

「え、何?」

柄にもなく弾んだ声だったので驚く。


『アレルヤもカウントダウンしろよ。』


そしてまたカウントダウンをし始めるハレルヤ。


(ええッ!)


『「ごーお、よーん、さーん……。」』


アレルヤの声とハレルヤの声が重なって1つになる。


『「にーい、いーち…!」』


『ゼロッ!!』



『アレルヤッ、誕生日おめでとな!!!!!』


「……え?」


『ほら、今日お前の誕生日だろうが。』


そうだ、今日は2月28日……


「ハレルヤ、覚えててくれたの?」


『あ、当たり前だろ?何年お前と一緒にいると思ってんだよ。お前のことは、俺が誰よりも知ってんだからなッ!///』


ハレルヤが恥ずかしがりながらも告げてくれた言葉。


「あ、あり、、がと……っ」


涙が溢れてきて、鳴咽でお礼の言葉さえきちんと言えなくなる。



『おいッ、泣くほどのことかよ。』

涙を拭う。

「ご、ごめッ!」


そして、心の中でハレルヤと向き合う。


「えっと、ハ、レルヤも、グスッ、誕生日、、ヒック、おめでと――ッ。」



なんとかハレルヤへもお祝いの言葉を伝えた。



『お、俺の誕生日ではなくないか?』


「何、グスン、言ってるの?グスッ。僕とハレルヤは、グスッ、運命共同体、グスッ、だもん!だから誕生日も、ヒック、一緒なんだよ?」


『……お、おう、ありがとな///』

今度は、ハレルヤから照れているだろう感情が伝わってきた。


「クスクス♪」


『な、何だよ、また急に――。』


「何でもないんだって♪」



少し自分を落ち着かせるために深呼吸する。



『ったく、20歳になった良い大人が泣きやがって……。』


「なっ、もう泣かないよ……///」


『あははっ。』


ハレルヤが笑う。


つられて僕も笑いだす。



(やっぱりハレルヤはすごいなぁ。)


どん底だった僕の心を難無く引き上げてくれた。


(ほんと、ハレルヤの存在は大きいな。)



きっと、これからもハレルヤに助けられながら生きていくんだろう。


でも助けられるばかりではなく、僕もハレルヤが困っているときは救いたい。


そう、心に誓った。



―――END
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