□贖罪 (後)
1ページ/5ページ
正式に果たし合う暇など無い。
今直ぐに、こいつを叩きのめしてやらなければ。
――そう思っていた。
「贖罪」
単純な暴力というやつ。
詰まらない理屈と比べ、それは何と便利な手段だろう。
俺を、相手を、正直にさせてくれる。
甘寧にとって生きる術だったそれは、
どんな状態でも遺憾無く発揮された。
部屋に入って開口一番、
甘寧は渾身の力を込めて凌統を殴りつけた。
そのままもう一度。
二度目はまともに腹に入り、
凌統の体が床に沈む。
…と思いきや、
一度沈んだ体が足を軸に、下から恐ろしい勢いで突き上げてくる。
凌統の足蹴をまともに肩に食らった甘寧は、後ろの壁に叩きつけられた。
そのまま凌統は、確実に回し蹴りで喉笛を狙って来る。
しかし甘寧は咄嗟の瞬発力で身を低くし、
頭上の空間を切り裂くような凄まじい蹴りを避けた。
そしてそのまま反動で微妙に傾いた体に体当たりを食らわせる。
ドオッという音とともに、
男二人が倒れこんだ衝撃で床が揺れる。