□贖罪 (後)
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正式に果たし合う暇など無い。


今直ぐに、こいつを叩きのめしてやらなければ。




――そう思っていた。





「贖罪」






単純な暴力というやつ。

詰まらない理屈と比べ、それは何と便利な手段だろう。

俺を、相手を、正直にさせてくれる。



甘寧にとって生きる術だったそれは、
どんな状態でも遺憾無く発揮された。

部屋に入って開口一番、
甘寧は渾身の力を込めて凌統を殴りつけた。

そのままもう一度。
二度目はまともに腹に入り、
凌統の体が床に沈む。


…と思いきや、

一度沈んだ体が足を軸に、下から恐ろしい勢いで突き上げてくる。

凌統の足蹴をまともに肩に食らった甘寧は、後ろの壁に叩きつけられた。

そのまま凌統は、確実に回し蹴りで喉笛を狙って来る。

しかし甘寧は咄嗟の瞬発力で身を低くし、

頭上の空間を切り裂くような凄まじい蹴りを避けた。

そしてそのまま反動で微妙に傾いた体に体当たりを食らわせる。

ドオッという音とともに、
男二人が倒れこんだ衝撃で床が揺れる。
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