ゆめ

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転校は、全てが新鮮だ。普段は放課が減るだけの移動教室も、ちょっとした冒険気分。行き交う生徒をみるのも楽しかった。更に嬉しい事に、ここの制服は結構可愛い。

ひらひらとはためく襟、羽織ったカーディガンからちらりとはみ出るスカート、脚を覆うサイハイ。パリパリと型の残る制服を自分なりに着くずして歩く。そのままでもいいけど、やっぱりアレンジは制服の醍醐味だと思う。

ポケットから伸びたコードは二つの耳に収まって、数日前に入れたばかりの曲がかわるがわる流れている。音の組み合わせで楽しくも悲しくもなる、音楽ってすごい!

なんだか一人でテンション高くなって、まっすぐな廊下をスキップしながら進む。ガラスを通った光がキラキラ光って、いい気分!わん、つー!いっち、に!助走をつけてくるっとターン!向こうの人も華麗に避けて、三回転!はいフィニッシュ!(決まった!)


「…おい、お前。」


両手を広げて決めポーズを取った先には、男の子が立っていた。(ぶつからなくてよかった!)
何だかとっても特徴的だけど、ギャグかなぁ!もしかして抜き打ちでツッコミのテスト?



「……、聞いているのか!」


男の子は何か言ってたようだけど、いきなり目の前で怒鳴り始めた。こんなとこでおっきい声だしたら迷惑でしょ!…何言ってるんだ、お前だ、って、



……………。



そんな、またまた〜。


「私あなたみたいな下まつげの長い知り合いいないよ〜、ナンパならヒヨコの養殖で忙しいのでお断りします!」

「誰が軟派などするか!失礼な奴だな。…まあいい、今すぐそのイヤホンを外せ。」


「え、イヤホン?うーん…、これはいわゆるアレ?残念だけどカツアゲデビューはちょっと勘弁してほしいかな〜。」


「違う!いちいち面倒な奴だな!校内に無駄なものを持ち込むのは校則違反だ。」


男の子は容赦なく私のポケットから出ているコードに手を伸ばしてきた。だけどその手は私の華麗な後ろステップにより、空気を掴んだだけに終わる。(さっき準備運動しててよかった!)

 
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